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河合つくし通信

取りまとめのないブログです…。一応細く長く続けていく予定。

本の紹介⑧ 三浦綾子「母」

そうそう、多喜二がよく言っていた話があったけ。

 昔々、仁徳天皇っていう情け深い天皇さんがいたんだと。お城の上から

眺めたら、かまどの煙が、細々と数えるほどしか上がっていなかったんだと。

それで天皇さんは、国民はみな貧乏だと可哀想に思って、税金ば取らん

ようになったんだと。したらば、何年か経って見たらば、どこの家からも

白い煙が盛んに立ち昇っていたんだと。天皇さんは大喜びで、国民が

豊かになったのは、わしが豊かになったのと同じことだって、喜んだ

んだと。

 この天皇さんと、多喜二の気持ちと、わだしにはおんなじ気持ちに思え

るどもね。天皇さんとおなんなじことを、多喜二も考えたっちゅうことにな

らんべか。ねえ、そういう理屈にならんべか。天皇さんば喜ばすことをして、

なんで多喜二は殺されてしまったんか、そこんところがわだしには、どうし

てもよくわかんない。学問のある人にはわかることだべか。